初音ミクの唸り

飽きたらやめます

無題

みたことない土地にどきどきと探究心を燃やしていた頃に戻りたい。道路脇の錆びた標識、倒れかかったカーブミラーを写真におさめることが好きだった。地方で見る潰れたパチンコ屋の広すぎる駐車場。繁る蔦が駐車場の入り口、銀のポールに絡んでいる。滲む汗と空腹。止まない蝉の音。ああ、コンビニは2km先のデイリーヤマザキか。パンを買い足し程なくして小さな川に腰を下ろす。地元の人々が後ろを通ることに目もくれず、ただただひとり空腹を満たした。当時の私は全力で無駄を謳歌していた

手記 5/20

父親に会った。約束の時刻に3時間遅れた。彼は怒らなかった。遅刻の契りとして夜ご飯をご馳走することにした。買い物を済ませ、時刻は16時。夜ご飯を諦めカフェに入ることになった。彼は金にがめつい。メニューを見るなり「今日は奢りだから良い物を頼もう」と宣う。「おお、煙草吸うんだな」彼と離れて十数年経つ。彼は1月に仕事を辞めた。今は時給1,200円で働いているそう。「もうやりたいことはやった。20代は酒を飲み、大変な良い思いをした。30前後で結婚し子供ができた。40代は仕事に尽くした。50過ぎて管理職にも就いた。世代交代だよ、これからは穏やかに暮らす。これはいつか来るものだよ」

 

時給制になった彼と経歴がボロボロで転職したての私の収入は変わらなかった。父親譲りの見栄を張り会計を済ませた

願い

虫が鳴いています。多摩川河川敷に浮かぶ4月6日の満月が照らす。ピンクムーンと言うそうだ。ああ、バイクも、行く自転車も照らす。まだ桜を見たい。また自転車に照らされる。親子連れ、幸せの権化。遠くて近いタワーマンションの赤、私は戻れない。愛媛に行こうと決めた8月は遥かに過ぎ、敗北の白旗を掲げて。雑草とアスファルトの境目を斜めを進む。懐中電灯を灯しながらボールを蹴る子供。風が強くて、強くて。ランニングをする男性の背中から"ゆら"と萠ゆる京王線をどうか幸あれと望む