初音ミクの唸り

飽きたらやめます

明星

  桜も緑を取り戻しはじめ、春に焦げた花びらが隅に溜まっている路を歳の近い大人が似合わないスーツに袖を通し歩いてゆく。来年は、と戯言を言いつつ来年は、と考える。何も見ぬまま、感じぬままに春一番が街を抜け、あっと言う間に今がきていた。自分が社会の歯車になっていない安心感は依然としてあり、今は季節の無言の変化に由来している。安心感を確かめると同時に感受性が壊死していた半年間を取り戻すつもりで八戸のビジネスホテルを予約した。さっき面接官が言った「他に君が活躍できる場所」を探しに行く