初音ミクの唸り

飽きたらやめます

手記 11/20

月が出ているらしい。今の席からはわずかも覗けない。大崎の人気のない広場では噴水がけたたましく噴き上がっている。家路を急ぐサラリーマンが広場を横切る姿は安酒の肴としてうってつけで、自分が社会の歯車になっていないことの証明になっている。安心感、消える焦燥感。自分はあくまで第三者。幼い頃、他者と同調できなかったときに覚えた疎外感さえ大崎の広場では安心へと溶ける。

 

福島旅行。磐越西線会津若松行の車窓から見た雄大磐梯山只見線会津川口行の車窓から見えた厳かに聳える越後山脈。一眼レフのシャッターは切らなかった。手元に残したくなかった。ミニマリスト。記憶さえ残ればよかった。本当に好きな景色は記憶だけに留めておきたい。その場を共有できないなら必要がない。

 

手元に何もない。噴水がピタと止んだ。どんなに気に入った風俗嬢も二度と指名していない。関係を寸断し続けている。本当は寸断したくない。噴水、月、星、夜。俺とは無関係に消えてゆく