初音ミクの唸り

飽きたらやめます

悴んだ手

  イルミネーションに腰を下ろす。イルミネーションに街は彩られ、イルミネーションに人は成り果てていた。白色と薄い桃色の電飾は複雑に人と絡まり合い、永久的な共存の意向を固く表明している最中で、ひどく満足気に、さも、人であるかのように煌々と生命力を発揮していた。彼らは燦然と輝く四肢から淫靡なオーラを放つようにして生命源をかき集める。

   イルミネーションに腰を下ろした途端、彼らは忽ち輝くことをやめ、人に還ってゆく。光は消えた。目を眩ませるだけの物体しか残されていない。悴んだ手を揉んだ。寒空を風が泳いだ。

  ずっと遠く、遠く彼方に人の群れが見える。夜も突き返すほどの明るい光が水晶体を駆け抜けた。イルミネーションは今も輝いていたが少し虚ろに見えた