初音ミクの唸り

飽きたらやめます

色の無い

綺麗なものが好きで、透明なものが好きで

嫉妬と欲望がうずまく、今の文明に生きるうえで頭の良い人の思惑どおりに金を落とすことは避けられず、喜怒哀楽がまるっと金儲けに利用されている。祝うケーキも仲直りの花束も、気分転換のJ-POPも思い出の遊園地も。嫉妬で、欲望で金は動き、嫉妬で、欲望で生活をしている。

小さい頃は公園の土から発掘したすべすべの石や、人ン家の庭で勝手に捕まえたトカゲや、教室で拾ったデカいクリップが心を満たした。喧嘩してもごめんなさいでカタがついた。気の知れた仲間と外をかけ回れば気分転換など容易い。欲に塗れていない記憶はもう上書きされない。

特段、利用されるのが嫌なわけではない。私は金好きで欲深い。けれど、綺麗なものが好きだ。綺麗で、透明な、色の無い。願わくば無色透明になりたい、でも、本当のところ、私は有色透明がいい

悴んだ手

  イルミネーションに腰を下ろす。イルミネーションに街は彩られ、イルミネーションに人は成り果てていた。白色と薄い桃色の電飾は複雑に人と絡まり合い、永久的な共存の意向を固く表明している最中で、ひどく満足気に、さも、人であるかのように煌々と生命力を発揮していた。彼らは燦然と輝く四肢から淫靡なオーラを放つようにして生命源をかき集める。

   イルミネーションに腰を下ろした途端、彼らは忽ち輝くことをやめ、人に還ってゆく。光は消えた。目を眩ませるだけの物体しか残されていない。悴んだ手を揉んだ。寒空を風が泳いだ。

  ずっと遠く、遠く彼方に人の群れが見える。夜も突き返すほどの明るい光が水晶体を駆け抜けた。イルミネーションは今も輝いていたが少し虚ろに見えた

手記 10/26

三者面談の帰りと思しき母とその娘が横を過ぎた。揚々とした女性特有の甲高い音が、長く放置された古く厚ぼったい鼓膜を鋭く叩いた。学校指定のジャージに後ろに束ねただけの黒い髪が特徴の娘が絶妙に芋くさく、彼女を愛おしく思ったも束の間、すぐさまどうしようもない過去の記憶に神経を支配された。記憶の中の女子中学生は私を軽蔑し、あらゆるトラウマを植え付けた。一通り耽り終えた頃には母娘は跡形もなく夜に消えていた。孤独は二人の存在を拒否していた。

  東京の人間の背中には鋼でできた大きなゼンマイが刺さっている。その鋼を引き抜くことはできず、自分で回すこともできない。ふとした拍子にジー、ジーと巻かれ、巻かれた分だけ自分の意識と無関係にセカセカと動き続ける。

 

  東京駅、品川駅、赤羽駅。都内の各県境駅および各主要駅にはゼンマイ課が設けられていて、訪れた人間に見境なく鋼を取り付けていく。男、女子供だろうと容赦はない。たちまち人の押し寄せる陸の港は阿鼻叫喚の巷と化し、最後の人間たちがいったん悲鳴をあげたと思ったら、カラクリ人間らが音速で改札を走り抜ける。さながらダービースタリオン。一着を獲った名誉ある人馬にはゼンマイ100回転が贈られ、名誉SEとして連続50000日出社を可能にさせている。さようなら名誉SE、彼に明日はない

 

  東京の人間は忙しなく動く。常に時間に追われている。職や利便性に捕らわれ、彼らは逃げ出すことができない。東京墓場。東京スカイツリーは東京に骨を埋めた人間への慰霊碑であり、湯水のように沸き続けるJ-POPは彼らに捧げる鎮魂歌である。東京で唯一容易に叶えられる夢がある。ゼンマイが外れる唯一の魔法、人間として最後の衝動。みな、夢を掴んで東京から消えてゆく。東京には夢がある

 

  

さようならホットパンツ女児

火照った太陽も次第に落ち着きを取り戻し、とうとう今年も枯れ木が萌ゆる冷たい季節を迎えようとしている。迎秋。透明に輝くグリーンの重たいドレスは捨ててしまおう。みすぼらしい、不揃いな、虫食い穴だらけの、オレンジ色のワンピースは嘸かし寒いであろう。ならば白い羽衣を纏うといい。冬は仕立て屋さんなのだ。

さようならホットパンツ女児。今年も彼女らは誰よりも美しかった。ホットパンツで登下校する少人数女児集団を見かけた。笑う、はしゃぐ、跳ねる、くすぐりといったスキンシップ。この時ほど永遠を願ったことはなかった。彼女らに来年はない。小麦色の真夏の果実は今その瞬間にしか存在せず、二度と同じ味に出くわすことはない。空間を切り取って額縁に飾りたい、飾りたい。儚く脆く、見上げることのみ許された天上人を愛しく思い、誰にも愛されぬまま、またひとつ歳をとる。

今年の秋は洋服を買いたい。近頃はファッション雑誌に目を通すことがしばしばある。シャツ一枚二万円と記されていたりすると思わず舌を巻いてしまうが、きっとフォアグラやらキャビアを練り込んだ生地でも使っているのだろう。いまいちわからない。挑戦の秋、百戦錬磨の俺は挑むことを惜しまない。先ずは周りから固めていこう。手始めにしまむらで女児ホットパンツを買う。次に女児用ミニスカート。もししまむらで女児用ホットパンツが割引されてるとこ見かけたら教えてください

回想録、廃人

廃人になりたい。誰もが期待をしない、手を差し伸べない、近付こうとしない、大変なろくでなしになりたい。昼夜問わず道の隅で座り込み世間を見下した目で街を見守る。さながらゴミ。比喩にさえ見放された存在に私は憧れる。私にとって廃人はかっこいいのだ。

幼い頃から親が厳しく、少しでも親の示す道を踏み外そうとするものなら厳しく叱られた。田舎に住んでいるクセに親がゲームを毛嫌いしていて、友人とコミュニケーションを取れず苦悩した記憶がある。というより苦悩の一言に尽きる幼少期だった。

いつも遊ぶ仲の良い友人がいた。私の小学校には「友達同士で学内から出てはいけない」という掟が存在した。そんな掟を軽々と破る友人と知り合い、二人で、時には複数人で自転車を30分漕ぎ大型スーパーに意味もなく突っ走ることが多々あった。掟は破るためにあったことを知る。

常に反逆者で突拍子もなくドデカイ夢を語り出すような友人だったのだが、今は当時の面影はなくクソ真面目に生活している。クソッたれ。人は変わる。共に門限を破った、こっそり親に取り上げられたお年玉を握りしめ駄菓子屋に駆け込んだ、公民館の雑談スペースを占拠して大声で騒いだ、学校で禁止されてたエアガンで遊んだ、思い出すだけでヤケ酒をせざるを得なくなるのだけど、この状況がどうも嫌いになれない。廃人はかっこいいのだ